信託報酬とリターンの関係を投資信託700本超の実績データで検証

信託報酬は確実に差し引かれる一方、リターンは不確実です。では、過去の実績データでは「高コストほど低リターン」と言い切れるのでしょうか。Fund Labの投資信託データから、2022年9月から2025年9月までのCAGR・シャープレシオと信託報酬の関係を集計しました。

信託報酬の中央値
全体
0.9185%
インデックス
0.407%
アクティブ
1.54%
対象は抽出成功736本。分類はファンド名に基づく機械分類です。

結論の前に、全体だけでは見えにくい

全体で見ると、信託報酬とCAGRのSpearman相関は -0.104 でした。シャープレシオとの相関も -0.249 です。全ファンドをひとまとめにすると、「高コストだから必ず低リターン」とは言い切れない弱さです。

ただし、これはコストが効かないという意味ではありません。ファンドの資産クラスや指数が混ざると、株式上昇局面でどの資産を持っていたかの影響が大きくなります。ここに、集計全体と条件をそろえた比較で結果が変わる、いわゆるシンプソンのパラドックスが入り込みます。

全体 fee×CAGR
-0.104
Spearman相関
全体 fee×シャープ
-0.249
Spearman相関
対象本数
736
抽出成功・review除く

信託報酬の分布: インデックスとアクティブで差が大きい

信託報酬の中央値は、全体で 0.9185% でした。インデックス分類の中央値は 0.407%、アクティブ分類の中央値は 1.54% です。まず、コスト水準そのものは分類によって大きく違います。

分類n中央値P10P90
全体7360.9185%0.2027%1.903%
インデックス2820.407%0.143%0.66%
アクティブ4431.54%0.605%1.9755%

数値は再集計後の結果MDから転記。fee_primary_pctを使用しています。

低コスト帯ほど成績が高く見えるが、これだけで結論しない

信託報酬の帯別に見ると、低コスト帯ほどCAGRとシャープレシオの中央値が高い結果でした。ただし、低コスト帯にはインデックス株式ファンドが多く、高コスト帯にはテーマ型・アクティブ型が多く含まれます。帯別表は出発点であり、最終結論ではありません。

信託報酬帯nCAGR中央値シャープ中央値ボラ中央値最大DD中央値
0.2%以下7322.08%1.5112.85%-8.99%
0.2%以上0.5%未満13615.94%1.4710.335%-8.905%
0.5%以上1.0%未満18914.57%1.3110.96%-9.08%
1.0%以上33812.985%0.95513.135%-11.88%

CAGR、シャープレシオ、ボラティリティ、最大ドローダウンはいずれも2022年9月から2025年9月までの過去データです。

本命は同じ資産クラス内の比較

資産クラスをそろえると、信託報酬とCAGRの負の関係ははっきりします。国内株式は -0.6491、先進国株式は -0.5994、新興国株式は -0.5307、米国株式は -0.3348 でした。

一方で、債券は 0.1019、REITは -0.0563 です。資産クラスによって、コストと成績の関係がほぼ見えない領域もあります。

資産クラスnfee×CAGRfee×シャープ
国内株式116-0.6491-0.4330
先進国株式34-0.5994-0.6218
新興国株式60-0.5307-0.5714
米国株式41-0.3348-0.4822
債券870.10190.0879
REIT64-0.0563-0.0619

相関はSpearman。nは抽出成功ファンド数です。

同じ指数では、コスト差が成績差に近づく

条件をさらにそろえ、同じ指数に連動するファンド群で見ると、コスト差の影響はより見えやすくなります。S&P500群11本では、fee×CAGRのSpearman相関が -0.9497、回帰傾きが -2.1422 でした。料率差は 0.5412pt、CAGR差は 1.49pt です。

同一指数群n料率差CAGR差Spearman傾き
S&P500110.5412pt1.49pt-0.9497-2.1422
MSCI ACWI(日本含む)30.1404pt0.25pt-1.0000-1.8077
FTSE全世界20.0768pt0.09pt-1.0000-1.1719
日経225200.5555pt2.46pt-0.6943-1.7822
TOPIX140.5170pt2.87pt-0.8614-3.6224
NASDAQ10030.0550pt0.22pt1.00003.7662

読み方の注意: リターンは分配金を考慮しない基準価額ベースです。分配実施ファンドは低めに出るため、同一指数群で高コスト側に古い分配型が多い場合、差の一部は分配の影響を含みます。特にTOPIX群のCAGR差は、コストだけで説明しない前提で読む必要があります。

NASDAQ100群は、n=3かつ料率差が0.0550ptにとどまりました。このように、料率差が小さい群では、短い期間の成績差からコスト効果を読みすぎないことも重要です。

高コストでも上位に入った反例はある

信託報酬1.0%以上のファンドは 338本 あり、そのうち 60本 は全体のCAGR上位25%に入りました。約17.8%でした。テーマ型やアクティブ型の一部が、2022年9月から2025年9月までの市場環境で大きく伸びたためです。

ただし、全体のfee×シャープレシオ相関は -0.249 でした。リターンだけで見ると反例はありますが、リスク調整後の指標では高コスト側の劣位が広がる形でした。

30年では、0.1%と1.0%の差が956,751円

最後に、信託報酬差だけを切り出したシミュレーションです。元本100万円、費用控除前年率5%、30年、毎年同じ率で複利計算した場合、信託報酬0.1%と1.0%の最終額差は 956,751円 でした。

信託報酬30年後の金額0.1%との差額
0.1%4,200,149円0円
0.5%3,745,318円-454,830円
1.0%3,243,398円-956,751円
2.0%2,427,262円-1,772,886円

これは信託報酬差だけを固定した試算です。実際のリターン、税金、分配、売買費用、資金流出入は含みません。

同じ指数・同じクラスで選ぶ場面では、コストは重要な確認材料

今回の集計から言えるのは、全体だけを見て「高コストは必ず低リターン」と結論づけるのは単純化しすぎだということです。資産クラスやテーマが混ざると、リターン差には市場環境の影響が大きく入ります。

一方で、同じ資産クラス、特に同じ指数に連動するファンド同士では、信託報酬の低さが成績差に近い形で表れました。コストだけで将来の成果は決まりませんが、比較条件をそろえた場面では、信託報酬は大きな判断材料になります。

本記事は情報提供を目的とした過去データの集計であり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資に関する最終判断はご自身の責任でお願いします。

本記事のデータと方法

対象はFund Labのランキング用データに含まれる投資信託748本です。信託報酬の抽出成功は736本、review扱いは12本でした。集計対象期間は2022年9月から2025年9月です。

信託報酬は、各ファンドの開示資料・公表情報に基づく直近値です。期中の引き下げは原則として過去期間に遡って反映していません。実質的な負担が併記されているファンドは実質値を優先し、売買委託手数料など事後的に変動する費用は含めていません。段階料率は基本料率を採用しています。

リターンは信託報酬控除後の基準価額ベースで、分配金を考慮していません。これは当サイト共通の算出基準です。分配実施ファンドは低めに出る場合があります。また、2022年9月から2025年9月までの期間は株式上昇局面を含むため、低コストが将来リターンを保証するものではありません。

よくある質問

信託報酬とは何ですか?
信託報酬は、投資信託を保有している間に信託財産から継続的に差し引かれる運用管理費用です。本記事では、各ファンドの開示資料・公表情報に基づく直近値を使い、2022年9月から2025年9月までの過去データとあわせて集計しています。特定ファンドへの投資推奨ではありません。
低コストの投資信託を選べばよいですか?
低コストだけで将来のリターンは決まりません。本記事の2022年9月から2025年9月までの集計では、全体の信託報酬とCAGRのSpearman相関は-0.104でした。一方、同じ資産クラスや同じ指数で比べると負の関係が強くなるため、コストは比較条件をそろえた場面で重要な確認材料になります。最終判断はご自身の責任で行ってください。
信託報酬と実質コストは何が違いますか?
信託報酬はあらかじめ示される運用管理費用で、実質コストは投資対象ファンドの費用などを含む実質的な負担を示す場合があります。本記事では、実質的な負担が併記されているファンドは実質値を優先し、売買委託手数料など事後的に変動する費用は含めていません。
信託報酬はどこで確認できますか?
信託報酬は、各ファンドの開示資料や運用会社などが公表する情報で確認できます。本文では個別資料名を挙げず、各ファンドの開示資料・公表情報に基づく直近値として扱っています。料率は引き下げや条件変更があり得るため、購入や保有判断の前には最新の公表情報を確認してください。

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Fund Labのランキングでは、CAGR、シャープレシオ、ボラティリティ、最大ドローダウンを並べ替えて確認できます。数値は過去データであり、投資推奨ではありません。

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