結論の前に、全体だけでは見えにくい
全体で見ると、信託報酬とCAGRのSpearman相関は -0.104 でした。シャープレシオとの相関も -0.249 です。全ファンドをひとまとめにすると、「高コストだから必ず低リターン」とは言い切れない弱さです。
ただし、これはコストが効かないという意味ではありません。ファンドの資産クラスや指数が混ざると、株式上昇局面でどの資産を持っていたかの影響が大きくなります。ここに、集計全体と条件をそろえた比較で結果が変わる、いわゆるシンプソンのパラドックスが入り込みます。
信託報酬の分布: インデックスとアクティブで差が大きい
信託報酬の中央値は、全体で 0.9185% でした。インデックス分類の中央値は 0.407%、アクティブ分類の中央値は 1.54% です。まず、コスト水準そのものは分類によって大きく違います。
| 分類 | n | 中央値 | P10 | P90 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 736 | 0.9185% | 0.2027% | 1.903% |
| インデックス | 282 | 0.407% | 0.143% | 0.66% |
| アクティブ | 443 | 1.54% | 0.605% | 1.9755% |
数値は再集計後の結果MDから転記。fee_primary_pctを使用しています。
低コスト帯ほど成績が高く見えるが、これだけで結論しない
信託報酬の帯別に見ると、低コスト帯ほどCAGRとシャープレシオの中央値が高い結果でした。ただし、低コスト帯にはインデックス株式ファンドが多く、高コスト帯にはテーマ型・アクティブ型が多く含まれます。帯別表は出発点であり、最終結論ではありません。
| 信託報酬帯 | n | CAGR中央値 | シャープ中央値 | ボラ中央値 | 最大DD中央値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.2%以下 | 73 | 22.08% | 1.51 | 12.85% | -8.99% |
| 0.2%以上0.5%未満 | 136 | 15.94% | 1.47 | 10.335% | -8.905% |
| 0.5%以上1.0%未満 | 189 | 14.57% | 1.31 | 10.96% | -9.08% |
| 1.0%以上 | 338 | 12.985% | 0.955 | 13.135% | -11.88% |
CAGR、シャープレシオ、ボラティリティ、最大ドローダウンはいずれも2022年9月から2025年9月までの過去データです。
本命は同じ資産クラス内の比較
資産クラスをそろえると、信託報酬とCAGRの負の関係ははっきりします。国内株式は -0.6491、先進国株式は -0.5994、新興国株式は -0.5307、米国株式は -0.3348 でした。
一方で、債券は 0.1019、REITは -0.0563 です。資産クラスによって、コストと成績の関係がほぼ見えない領域もあります。
| 資産クラス | n | fee×CAGR | fee×シャープ |
|---|---|---|---|
| 国内株式 | 116 | -0.6491 | -0.4330 |
| 先進国株式 | 34 | -0.5994 | -0.6218 |
| 新興国株式 | 60 | -0.5307 | -0.5714 |
| 米国株式 | 41 | -0.3348 | -0.4822 |
| 債券 | 87 | 0.1019 | 0.0879 |
| REIT | 64 | -0.0563 | -0.0619 |
相関はSpearman。nは抽出成功ファンド数です。
同じ指数では、コスト差が成績差に近づく
条件をさらにそろえ、同じ指数に連動するファンド群で見ると、コスト差の影響はより見えやすくなります。S&P500群11本では、fee×CAGRのSpearman相関が -0.9497、回帰傾きが -2.1422 でした。料率差は 0.5412pt、CAGR差は 1.49pt です。
| 同一指数群 | n | 料率差 | CAGR差 | Spearman | 傾き |
|---|---|---|---|---|---|
| S&P500 | 11 | 0.5412pt | 1.49pt | -0.9497 | -2.1422 |
| MSCI ACWI(日本含む) | 3 | 0.1404pt | 0.25pt | -1.0000 | -1.8077 |
| FTSE全世界 | 2 | 0.0768pt | 0.09pt | -1.0000 | -1.1719 |
| 日経225 | 20 | 0.5555pt | 2.46pt | -0.6943 | -1.7822 |
| TOPIX | 14 | 0.5170pt | 2.87pt | -0.8614 | -3.6224 |
| NASDAQ100 | 3 | 0.0550pt | 0.22pt | 1.0000 | 3.7662 |
読み方の注意: リターンは分配金を考慮しない基準価額ベースです。分配実施ファンドは低めに出るため、同一指数群で高コスト側に古い分配型が多い場合、差の一部は分配の影響を含みます。特にTOPIX群のCAGR差は、コストだけで説明しない前提で読む必要があります。
NASDAQ100群は、n=3かつ料率差が0.0550ptにとどまりました。このように、料率差が小さい群では、短い期間の成績差からコスト効果を読みすぎないことも重要です。
高コストでも上位に入った反例はある
信託報酬1.0%以上のファンドは 338本 あり、そのうち 60本 は全体のCAGR上位25%に入りました。約17.8%でした。テーマ型やアクティブ型の一部が、2022年9月から2025年9月までの市場環境で大きく伸びたためです。
ただし、全体のfee×シャープレシオ相関は -0.249 でした。リターンだけで見ると反例はありますが、リスク調整後の指標では高コスト側の劣位が広がる形でした。
30年では、0.1%と1.0%の差が956,751円
最後に、信託報酬差だけを切り出したシミュレーションです。元本100万円、費用控除前年率5%、30年、毎年同じ率で複利計算した場合、信託報酬0.1%と1.0%の最終額差は 956,751円 でした。
| 信託報酬 | 30年後の金額 | 0.1%との差額 |
|---|---|---|
| 0.1% | 4,200,149円 | 0円 |
| 0.5% | 3,745,318円 | -454,830円 |
| 1.0% | 3,243,398円 | -956,751円 |
| 2.0% | 2,427,262円 | -1,772,886円 |
これは信託報酬差だけを固定した試算です。実際のリターン、税金、分配、売買費用、資金流出入は含みません。
同じ指数・同じクラスで選ぶ場面では、コストは重要な確認材料
今回の集計から言えるのは、全体だけを見て「高コストは必ず低リターン」と結論づけるのは単純化しすぎだということです。資産クラスやテーマが混ざると、リターン差には市場環境の影響が大きく入ります。
一方で、同じ資産クラス、特に同じ指数に連動するファンド同士では、信託報酬の低さが成績差に近い形で表れました。コストだけで将来の成果は決まりませんが、比較条件をそろえた場面では、信託報酬は大きな判断材料になります。
本記事は情報提供を目的とした過去データの集計であり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資に関する最終判断はご自身の責任でお願いします。
本記事のデータと方法
対象はFund Labのランキング用データに含まれる投資信託748本です。信託報酬の抽出成功は736本、review扱いは12本でした。集計対象期間は2022年9月から2025年9月です。
信託報酬は、各ファンドの開示資料・公表情報に基づく直近値です。期中の引き下げは原則として過去期間に遡って反映していません。実質的な負担が併記されているファンドは実質値を優先し、売買委託手数料など事後的に変動する費用は含めていません。段階料率は基本料率を採用しています。
リターンは信託報酬控除後の基準価額ベースで、分配金を考慮していません。これは当サイト共通の算出基準です。分配実施ファンドは低めに出る場合があります。また、2022年9月から2025年9月までの期間は株式上昇局面を含むため、低コストが将来リターンを保証するものではありません。
よくある質問
気になるファンドを実績データで確認
Fund Labのランキングでは、CAGR、シャープレシオ、ボラティリティ、最大ドローダウンを並べ替えて確認できます。数値は過去データであり、投資推奨ではありません。
ランキングを見る