キャプチャレシオとは?
上昇キャプチャ・下落キャプチャで「攻めと守り」を数値化する

「このファンドは上げ相場でどれだけ伸び、下げ相場でどれだけ踏ん張るのか」——リターンやシャープレシオだけでは見えにくいこの性格を、ベンチマークと比べて1つの数字にしたのがキャプチャレシオです。この記事では上昇キャプチャ・下落キャプチャの意味と読み方を、日本の投資信託の実測データで具体的に解説します。あわせてベータ・アルファ・相関・トラッキングエラー・水中チャートの見方も整理し、Fund Labのバックテストで実際に確認する方法まで紹介します。

キャプチャレシオとは?(上昇キャプチャ・下落キャプチャ)

キャプチャレシオ(capture ratio)とは、基準となる指数(ベンチマーク)が動いたとき、自分のポートフォリオがその動きをどれだけ「取れた」「被った」かを割合で表す指標です。上げ相場と下げ相場を分けて測るのが特徴で、2つの数値に分かれます。

  • 上昇キャプチャ:ベンチマークが上昇した月だけを集計し、その上昇のうち何%を取れたか。100%超なら、上げ相場でベンチより伸びたことを示します。
  • 下落キャプチャ:ベンチマークが下落した月だけを集計し、その下落のうち何%を被ったか。100%未満なら、下げ相場でベンチより損失を抑えた(守りが強い)ことを示します。

かんたんな例で考えてみます。あるベンチマークがプラスの月に合計+50%、マイナスの月に合計-20%動いたとします。あなたのポートフォリオが上げの局面で+40%、下げの局面で-10%だったなら、上昇キャプチャは40÷50=80%、下落キャプチャは10÷20=50%。「上げは8割取れて、下げは半分で済んだ」という読み方になります。

計算方法(Fund Labの場合)

Fund Labでは、月ごとの単純平均ではなく、ベンチマークが上昇した月をすべて複利でつないだ成長率どうしの比(下落側も同様)でキャプチャレシオを計算しています。これは投信評価で広く使われるモーニングスター方式です。月次の基準価額(円建て)に基づく実測値で、信託報酬控除後・分配金再投資ベースのデータを用います。

下落キャプチャで「守りの強さ」を読む

下落キャプチャは、下げ相場でどれだけ損失を抑えられたかを直接表すため、「守りの強さ」を比べるのに向いています。下のカードは、すべて全世界株式(オルカン)をベンチマークにしたときの実測値です(期間は後述)。同じ「株式中心」でも、下落キャプチャがこれだけ違います。

8資産バランス型の下落キャプチャ
66.3%
下げをオルカンの約3分の2に抑制
S&P500の下落キャプチャ
108.8%
下げはオルカンより少し大きい
FANG+の下落キャプチャ
124.9%
下げもオルカンの約1.25倍

下落キャプチャが100%を下回る8資産バランス型は、下げ相場での値下がりをベンチより小さく抑えています。一方、値動きの大きい指数に連動するファンドは下落キャプチャが100%を超え、下げ相場ではベンチより大きく下落していたことが読み取れます。次の章では、上昇キャプチャもあわせて一覧で見ていきます。

実データで見るキャプチャレシオ一覧(vs オルカン)

Fund Labのバックテストで、代表的なファンド・ポートフォリオを全世界株式(オルカン)をベンチマークに実測した結果です。下表は上昇キャプチャの高い順(=攻めの順)に並べています。いずれも例示であり、特定ファンドの購入を推奨するものではありません。

ポートフォリオ(例示)上昇
キャプチャ
下落
キャプチャ
ベータアルファ
(年率)
相関最大
下落率
FANG+(iFreeNEXT FANG+)291.4%124.9%1.41+6.83%0.7223.4%
S&P500(eMAXIS Slim 米国株式)123.9%108.8%1.11-0.25%0.9814.0%
オルカン(ベンチマーク=基準)100%100%1.001.009.9%
オルカン70%+先進国債券30%63.6%86.3%0.80-0.60%0.998.0%
8資産バランス型(eMAXIS Slim)35.4%66.3%0.56-0.32%0.963.2%
集計条件:ベンチマーク=eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)。期間は2020年4月〜2025年10月(月次66サンプル)の実測値。アルファは年率・リスクフリーレートを考慮したジェンセンのアルファ。最大下落率は各ポートフォリオ自身の最大ドローダウン。「ベンチマーク=基準」の行はオルカン自身なので、キャプチャ・相関は定義上100%・1.00になります。なおNASDAQ100(iFreeNEXT NASDAQ100)はデータ開始が2020年8月のため上表とは期間がそろいませんが、同じ手法では上昇キャプチャ約164.7%・下落キャプチャ約128.3%・ベータ1.29・アルファ-2.03%・相関0.89でした。

攻め型(FANG+・S&P500)の読み方

FANG+は上昇キャプチャ291.4%と、上げ相場でオルカンの約2.9倍も伸びていました。この5年は集中型のテック指数に強い追い風が吹いた時期で、結果としてアルファ(リスク対比の上乗せ)もプラスに出ています。ただし下落キャプチャは124.9%=下げ相場ではオルカンの1.25倍下落しており、上げも下げも大きく取りに行く性格です。相関0.72・トラッキングエラーも後述のとおり大きく、ベンチから大きく離れた値動きをします。少数銘柄への集中投資はリスクも大きく、上げ相場でなければ評価は変わる点に注意が必要です(FANG+の特性はFANG+の分析記事でも解説しています)。

S&P500は上昇キャプチャ123.9%・下落キャプチャ108.8%・相関0.98で、オルカンと連動しながら上げも下げも少しずつ大きいという、ベータ1.11らしい素直なプロファイルです。

守り型(バランス型・債券ミックス)の読み方

8資産バランス型は下落キャプチャ66.3%で下げをオルカンの約3分の2に抑え、最大下落率も3.2%とオルカン(9.9%)より大幅に浅く、守りはしっかり効いています。一方で上昇キャプチャは35.4%と、上げ相場ではオルカンの3分の1ほどしか取れていません。つまり「下げを抑える」かわりに「上げも取りこぼす」というトレードオフが数字に表れており、この上昇相場では取りこぼした上昇の方が大きく、トータルのリターンはオルカンを下回りました。守りの強さと引き換えに何を手放しているかが、キャプチャレシオを見るとはっきりします。

「オルカン70%+先進国債券30%」は、株式に債券を混ぜて値動きをやわらげた例です。下落キャプチャは86.3%まで下がり下げを多少抑えていますが、相関は0.99と非常に高い点に注目してください。為替ヘッジなしの先進国債券は、円安・円高を通じて株式と同じ方向に動きやすく、期待されるほど下落を打ち消しません。「債券を入れたのに思ったより守れていない」という現象は、相関の高さで説明できます(資産どうしの相関は相関係数マトリクスの記事相関ツールで確認できます)。

ベータ・アルファ・相関・トラッキングエラーの見方

Fund Labのバックテストでは、キャプチャレシオと一緒に「関係性」を表す4つの指標が表示されます。キャプチャレシオが上げ・下げを分けて見るのに対し、これらは上げ下げを区別しない平均的な指標です。併せて見るとポートフォリオの性格を多面的に把握できます。

指標意味読み方の目安
ベータベンチが1%動くとき、ポートフォリオが平均何%動くかの感応度1超で値動きが大きい/1未満で小さい(例:8資産0.56・FANG+1.41)
アルファ(年率)ベータで説明できる分を引いた、リスク対比の超過リターン(過去実績)プラスで上乗せあり。ただし将来を保証しない
相関ベンチとの値動きの連動性(-1〜+1)1に近いほど同じ動き=分散効果が小さい
トラッキングエラーベンチとのリターン差の年率のブレ大きいほどベンチから離れた動き(例:S&P500 3.8%・FANG+19.7%)
「リターンが高い=アルファが高い」ではない

NASDAQ100は年率リターンこそ高い指数ですが、オルカンを基準にしたアルファは-2.03%とマイナスでした。これは「そのリターンの大半は、ベンチより大きいリスク(ベータ1.29)を取った結果として説明できる」ことを意味します。アルファはリターンの大きさではなく、取ったリスクに見合わない上乗せがあったかを測る指標です。高いリターン=賢い運用とは限らない、という点を数字で確かめられます。

水中チャートで「下落の深さと長さ」を見る

キャプチャレシオやベータが「数値」でポートフォリオの性格を表すのに対し、水中チャート(アンダーウォーター・チャート)は下落の経過を「図」で見せてくれます。バックテストの結果画面に表示されます。

水中チャートは、各月で「直前の高値からどれだけ下がっているか」を時系列で描いた図です。0%のラインが高値(水面)で、線が下に潜るほど含み損が深いことを表します。最も深く潜った点が、その期間の最大ドローダウン(最大下落率)です。ベンチマークを選ぶと、ポートフォリオ(面)とベンチ(点線)が重ねて表示されるため、どの局面で・どちらが・どれだけ深く長く潜ったかがひと目で分かります。

たとえば下落キャプチャの低いバランス型は、水中チャートでも浅いところで推移し、回復も早い傾向があります。逆に値動きの大きい指数は深く潜り、水面(高値)に戻るまで時間がかかります。下落の深さだけでなく「戻るまでの時間」も投資を続けるうえで重要で、実際にどれくらいかかったかは最大ドローダウン回復期間の実測記事で集計しています。

キャプチャレシオを使うときの3つの注意

① 相場局面に強く依存する

キャプチャレシオは集計した期間の相場に大きく左右されます。本記事の数値はいずれも2020年4月以降の株式の上昇相場で測ったものです。上げ相場では上昇キャプチャの高い攻め型が有利に見えやすく、下げが続く局面では下落キャプチャの低い守り型が相対的に評価されます。1つの期間の数字を将来の前提にしないことが大切です。

② 「上昇は高く、下落は低い」が理想だが現実はトレードオフ

理論上は上昇キャプチャが高く下落キャプチャが低いほど効率的ですが、実際のファンドで両方を同時に満たすのは簡単ではありません。今回のデータでも、攻め型は上昇・下落とも100%超、守り型は両方とも100%未満と、上げを取る力と下げを抑える力はおおむね連動していました。「どちらをどれだけ取り、どれだけ抑えたか」のバランスとして読み、自分が許容できる下落の大きさと照らし合わせるのが実践的です。

③ 単独で判断せず、他の指標と組み合わせる

キャプチャレシオはあくまでベンチマークとの「関係性」を測る指標です。シャープレシオ(リスク効率)や最大ドローダウン(下落の絶対値)、相関(分散の効きやすさ)と組み合わせて見ることで、ポートフォリオの全体像がつかめます。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

自分のポートフォリオのキャプチャレシオを確かめる

Fund Labのバックテストでポートフォリオを組み、ベンチマークを選ぶだけで、上昇・下落キャプチャ/ベータ/アルファ/相関/トラッキングエラーと水中チャートが自動で表示されます。すべて無料・登録不要です。

よくある質問

Q. キャプチャレシオとは何ですか?
キャプチャレシオは、ベンチマーク(基準となる指数)が動いたとき、自分のポートフォリオがその動きの何%を取れた(または被った)かを示す指標です。ベンチマークが上昇した月だけを集計したものが上昇キャプチャ、下落した月だけを集計したものが下落キャプチャです。上昇キャプチャが100%を超えると上げ相場でベンチより伸びたこと、下落キャプチャが100%を下回ると下げ相場でベンチより損失を抑えたことを意味します。Fund Labでは、上昇した月をすべて複利でつないだ成長率どうしの比(モーニングスター方式)で計算しています。
Q. 上昇キャプチャ・下落キャプチャは何%なら良いのですか?
理論上は「上昇キャプチャが高く、下落キャプチャが低い」ほど効率の良いポートフォリオとされます(上げはしっかり取り、下げは抑える)。ただし現実のファンドはトレードオフの関係にあり、両方を同時に達成するのは簡単ではありません。値動きの大きい資産は上昇・下落キャプチャとも100%を超えやすく、分散されたバランス型は両方とも100%を下回りやすい傾向があります。さらにキャプチャレシオは集計した相場局面に強く依存するため、特定の「良い数字」を絶対視せず、上げと下げのどちらをどれだけ取った/抑えたかのバランスとして読むことが大切です。
Q. キャプチャレシオとベータ・アルファはどう違いますか?
ベータはベンチマークが1%動くときポートフォリオが平均何%動くかという「値動きの感応度」を1つの数値で表します。アルファはベータで説明できる分を差し引いた、リスク対比の超過リターン(過去実績)です。これらは上げ相場と下げ相場を区別しない平均的な指標です。一方キャプチャレシオは上昇局面と下落局面を分けて測るため、「上げは取れているのに下げで大きく被っている」といった非対称性を読み取れる点が違います。3つを併せて見ると、ポートフォリオの性格を多面的に把握できます。
Q. キャプチャレシオはどこで確認できますか?
Fund Labのバックテスト(無料・登録不要)で、ポートフォリオを組んでベンチマークを選ぶと、上昇キャプチャ・下落キャプチャ・ベータ・アルファ・相関・トラッキングエラーの6指標が自動で表示されます。あわせて各月の高値からの下落率を時系列で描く水中チャートも表示され、ベンチマークと比べてどの局面でどれだけ深く・長く下落したかを確認できます。すべて過去の実測データに基づく値で、将来の成果を示すものではありません。
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