集計の前提(データの範囲と期間)
集計対象: Fund Lab収録861本のうち、5年分の月次データが揃う639本(ランキングページの5年集計と同一データ)
集計期間: 2020年9月〜2025年9月(5年)
計算基準: 月次基準価額(円建て)に基づく実測値
用語: 最大ドローダウン=期間中に高値からどれだけ下げたかの最大値。回復期間(底→高値)=下落の底を打ってから直前の高値を取り戻すまでの月数。水面下期間(高値→回復)=高値をつけてから再び高値を回復するまでの月数(下落局面と回復局面の合計)
データ生成日: 2026年5月29日
※本記事は2026年6月時点のスナップショット(固定値)です。最新のファンド別データはランキングページで確認できます。
本記事の集計期間(2020年9月〜2025年9月)は世界的な株式の上昇相場にあたり、大きな下落のあとに比較的すばやく株価が戻った時期を多く含みます。そのため以下で示す回復期間は、歴史的に見て短めに出ている可能性があります。リーマンショック級の下落では回復に数年かかった例もあり、「下落しても数ヶ月で戻る」と一般化することはできません。なお、2020年初頭の急落(いわゆるコロナショック)は本記事の集計期間(2020年9月〜)より前にあたるため、対象に含まれていません。過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。
投資信託は下落から何ヶ月で回復する?(中央値)
Fund Labの実測集計では、各ファンドが最大ドローダウンの底を打ってから直前の高値を取り戻すまでの「回復期間」は中央値で6ヶ月でした。ただし、これは「底値からの戻り」だけを見た数字です。高値をつけてから下落し、再び高値に戻るまで(水面下にいた合計期間)の中央値は17ヶ月と、3倍近くになります。下落はゆっくり進み、底打ち後の戻りは比較的速い、という非対称な動きが背景にあります。
見逃せないのが3枚目のカードです。集計した639本のうち161本(約25%、4本に1本)は、2025年9月時点で最大ドローダウンからまだ回復していません。上の「中央値6ヶ月・17ヶ月」は、あくまで期間内に高値を取り戻した478本だけを対象にした数字であり、回復できていないファンドはこの中央値には含まれていません。つまり実際には「数ヶ月で戻ったファンド」と「何年も水面下のままのファンド」に大きく分かれているのが実態です。
回復期間の分布——半数は半年以内、でも4本に1本は未回復
回復した478本について、底を打ってから直前の高値を取り戻すまでの期間を分布で見ると次のとおりです。
| 回復期間(底→高値) | ファンド数 | 割合(回復した478本中) |
|---|---|---|
| 1〜3ヶ月 | 134本 | 28% |
| 4〜6ヶ月 | 116本 | 24% |
| 7〜12ヶ月 | 105本 | 22% |
| 13〜24ヶ月 | 105本 | 22% |
| 25ヶ月以上 | 18本 | 4% |
回復したファンドのうち約半数(52%)は底打ちから6ヶ月以内、約4分の3が1年以内に高値を取り戻しています。ここだけ見ると「下落しても1年で戻る」と感じられますが、これはあくまで回復できたファンドの中での話です。これとは別に161本(全体の25%)が期末時点で未回復であり、その中には何年も高値を回復していないファンドが含まれます。回復の早いグループと、戻らないグループの二極化を読み取ることが重要です。
下落が深いほど回復は遅い——下落の深さ別の回復期間
回復にかかる時間は、下落の深さ(最大ドローダウン)と強く結びついています。下落率で4つのグループに分けると、深い下落ほど回復期間が長く、未回復の割合も急増します。
| 最大下落率 | 該当本数 | 回復期間 中央値 (底→高値) | 未回復の割合 |
|---|---|---|---|
| -10%以内 | 182本 | 5ヶ月 | 9% |
| -10%〜-20% | 303本 | 7ヶ月 | 23% |
| -20%〜-30% | 87本 | 15ヶ月 | 39% |
| -30%超 | 67本 | 17ヶ月 | 58% |
下落が-10%以内なら中央5ヶ月で回復し、未回復はわずか9%。一方、-30%を超える下落をしたファンドは回復期間の中央値が17ヶ月に伸び、半数以上(58%)が2025年9月時点でまだ高値を回復していません。これは「深く下げるほど、戻すために必要な上昇率も大きくなる」という数学的な性質によるものです(例えば-50%下げると、元に戻るには+100%上昇する必要があります)。値動きの大きい資産でリターンを狙うほど、回復に必要な時間も覚悟しておく必要があることが、過去データからはっきり表れています。
資産タイプ別の回復期間——債券は「浅いが戻らない」
下落の深さと回復のしかたは、資産タイプによっても性格が異なります。ファンド名から大まかに分類した参考値ですが、傾向は明確です。
| 資産タイプ | 本数 | 最大下落率 中央値 | 回復期間 中央値 (底→高値) | 未回復の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 株式型(新興国を除く) | 424本 | -13.2% | 6ヶ月 | 21% |
| 新興国株式 | 39本 | -21.0% | 9ヶ月 | 36% |
| REIT(不動産投信) | 53本 | -14.7% | 15ヶ月 | 13% |
| バランス型 | 41本 | -7.2% | 5ヶ月 | 17% |
| 債券 | 73本 | -10.5% | 6ヶ月 | 63% |
| ゴールド(参考・少数) | 9本 | -13.9% | 11ヶ月 | 0% |
最も目を引くのは債券型です。最大下落の深さは中央-10.5%と株式型より浅いにもかかわらず、63%が未回復でした。株式の下落が「急落→反発」で戻りやすいのに対し、債券は金利が上昇する局面でじわじわと基準価額が下がり、金利が高止まりするとそのまま戻りにくい、という違いが背景にあります。後述するとおり、国内債券の代表的なインデックスファンドは2021年7月の高値から4年以上、高値を回復していません。「値動きが小さい=安全ですぐ戻る」とは限らない好例です。
逆にバランス型は最大下落が中央-7.2%と浅く、回復も中央5ヶ月と最も速い傾向でした。複数の資産に分散することで下落そのものを抑え、結果として回復も早くなっています。REITは下落の深さは株式並みでも回復に中央15ヶ月とやや時間がかかりました。資産タイプによる相性は相関係数マトリクスの記事や相関ツールでも確認できます。
主要指数の最大ドローダウンと回復期間【一覧表】
よく話題になる指数に連動する代表的なファンドについて、2020年9月以降の最大ドローダウンと回復の経過を一覧にしました(下落率の深い順・例示であり特定ファンドの推奨ではありません)。「高値」「底」「回復」はその月を、「水面下期間」は高値から回復までの月数を示します。
| 指数(例示ファンド) | 最大 下落率 | 高値 | 底 | 回復 | 水面下 期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| FANG+(iFreeNEXT FANG+) | -34.0% | 2021年11月 | 2022年12月 | 2023年5月 | 18ヶ月 |
| NASDAQ100(iFreeNEXT NASDAQ100) | -23.2% | 2021年12月 | 2022年12月 | 2023年5月 | 17ヶ月 |
| S&P500(eMAXIS Slim 米国株式) | -15.8% | 2024年12月 | 2025年4月 | 2025年7月 | 7ヶ月 |
| 新興国株式(eMAXIS Slim 新興国株式) | -15.0% | 2021年6月 | 2022年10月 | 2023年7月 | 25ヶ月 |
| 先進国株式(eMAXIS Slim 先進国株式) | -12.5% | 2025年1月 | 2025年4月 | 2025年7月 | 6ヶ月 |
| 国内債券(eMAXIS Slim 国内債券) | -12.0% | 2021年7月 | 継続中 | 未回復 | 4年以上 |
| 全世界株式・オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式) | -11.5% | 2025年1月 | 2025年4月 | 2025年7月 | 6ヶ月 |
| 日経平均(eMAXIS Slim 日経平均) | -10.3% | 2024年3月 | 2025年3月 | 2025年6月 | 15ヶ月 |
| 先進国債券(eMAXIS Slim 先進国債券) | -7.8% | 2022年10月 | 2022年12月 | 2023年6月 | 8ヶ月 |
| ゴールド(iシェアーズ ゴールド・為替ヘッジなし) | -7.7% | 2021年5月 | 2021年9月 | 2022年2月 | 9ヶ月 |
| TOPIX(eMAXIS Slim 国内株式TOPIX) | -7.3% | 2021年9月 | 2022年9月 | 2022年11月 | 14ヶ月 |
| 8資産バランス(eMAXIS Slim バランス8資産均等型) | -5.2% | 2022年8月 | 2022年12月 | 2023年5月 | 9ヶ月 |
この表からは、ファンドによって「最も深い下落」が起きた時期が違うことが読み取れます。FANG+やNASDAQ100は2022年の下落が最も深く(-34.0%・-23.2%)、高値を取り戻すまで17〜18ヶ月かかりました。一方、分散の効いたオルカン・S&P500・先進国株式では2022年の下落は比較的浅く、期間内で最も深かったのはむしろ2025年4月の調整局面(-11.5%〜-15.8%)で、底打ちからわずか3ヶ月で高値を回復しています。同じ「株式」でも、集中した指数ほど下落が深く回復に時間がかかり、分散した指数ほど浅く速く戻る傾向がはっきり出ています。
そして国内債券は2021年7月の高値を4年以上回復しておらず、表の中で唯一「未回復」です。金利上昇局面の債券がいかに戻りにくいかを示す実例といえます。各ファンドの最大ドローダウンの深さはランキングページで全639本を並び替えて確認でき、気になる組み合わせはバックテストで下落と回復の経過を検証できます。
ドローダウンの回復期間をどう使うか(3つの注意)
① 「回復するまで持ち続けられるか」を事前に考える
回復期間のデータが最も役立つのは、下落したときの心構えです。過去データでは下落が深いほど回復に時間がかかり、-30%超の下落は中央17ヶ月、半数以上が未回復でした。底値圏で不安に耐えきれず売ってしまうと、その後の回復の上昇を取り逃します。自分が許容できる下落の深さと、回復を待てる時間を、投資を始める前に決めておくことが大切です。
② 近い将来に使うお金は「戻らないリスク」を重く見る
「いつか戻る」は、使う時期が決まっていないお金にだけ当てはまる考え方です。数年以内に使う予定があるお金は、回復を待つ時間がありません。債券型でも数年単位で未回復になりうることを踏まえ、使う時期が近いお金ほど値動きの小さい資産の比率を高める、という考え方が知られています。
③ この期間の回復の速さを将来の前提にしない
繰り返しになりますが、本記事の集計期間は株式の上昇相場でした。「下落しても数ヶ月〜1年で戻る」は、この5年間がたまたまそうだっただけかもしれません。過去にはリーマンショックのように回復まで数年を要した局面もあります。回復期間は将来を約束する数字ではなく、あくまで「過去にこうだった」という参考データとして使ってください。
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