「為替ヘッジあり」と書いてあると、なんとなく守りが堅そうに見えます。
けれど、為替ヘッジは万能の盾ではありません。守ろうとするのは、外国株式そのものの値下がりではなく、円と外貨の値動きによる影響です。
たとえるなら、為替ヘッジは雨具です。為替という雨を弱めることはできますが、株式市場という地面が揺れたときまで止めてくれるわけではありません。
今回は、
- たわらノーロード 先進国株式
- たわらノーロード 先進国株式<為替ヘッジあり>
を、2020年10月から2025年10月までの同じ5年間で比較しました。どちらもMSCIコクサイ・インデックスへの連動を目指し、主な違いは為替ヘッジの有無です。
結果は、ヘッジなしの年率リターンが25.15%、ヘッジありが12.07%でした。一方、ヘッジありはボラティリティがやや小さくなりました。そして意外なことに、この5年間の月次データでは、最も深い下落を経験したのはヘッジありのほうでした。なぜそうなったのかは、本文で順番にほどきます。
ただし、この差をそのまま未来へ延ばすことはできません。この5年間にどんな条件が重なったのかを含めて読みましょう。
為替ヘッジとは、外貨の値動きを小さくする仕組み
日本から外国株式へ投資すると、投資成果には二つの値動きが関わります。
- 外国株式そのものの値動き
- 円と外貨の為替変動
たとえば米国株が現地通貨で上がっても、同時に大きな円高になれば、円に換算した利益が小さくなることがあります。反対に、株価が同じでも円安になれば、円換算の基準価額を押し上げることがあります。
為替ヘッジありのファンドは、為替予約などを使い、2番目の影響を小さくしようとします。ただし、為替の影響を完全にゼロにするものではありません。
また、一般に為替ヘッジにはコストがかかります。通貨間の短期金利差などが影響するため、コストは一定ではありません。
同じシリーズを、同じ5年間で比べた結果
| 指標 | ヘッジなし | ヘッジあり |
|---|---|---|
| 年率リターン(CAGR) | 25.15% | 12.07% |
| 5年間の累積リターン | 206.98% | 76.77% |
| 年率ボラティリティ | 14.91% | 13.45% |
| 最大ドローダウン | -12.55% | -23.93% |
| 信託報酬(年率・税込) | 0.09889% | 0.22000% |
期間は2020年10月〜2025年10月。月次基準価額による過去の実績です。
開始時に100万円を一括投資し、そのまま保有したと仮定すると、基準価額ベースでは、
- ヘッジなし:約307.0万円
- ヘッジあり:約176.8万円
となりました。
この期間は、為替変動がヘッジなしファンドの円換算リターンにプラスに働いた局面を含みます。さらに、両ファンドの信託報酬には年0.12111ポイントの差があり、ヘッジありには別途、基準価額に反映されるヘッジ取引の影響もあります。
ただし、約130万円の最終金額差を、信託報酬やヘッジコストだけで説明することはできません。為替変動を含む複数の要因が反映された結果です。
「ヘッジありなのに最大下落が深い」という意外な結果
ボラティリティは、ヘッジなし14.91%に対して、ヘッジあり13.45%でした。為替の影響を抑えたヘッジありのほうが、日常的な値動きの大きさはやや小さくなっています。
ところが最大ドローダウンは、
- ヘッジなし:-12.55%
- ヘッジあり:-23.93%
と、ヘッジありのほうが深くなりました。
これは矛盾ではありません。
ボラティリティは期間全体の揺れの大きさ、最大ドローダウンは最も深い一回の下落を見ています。さらに、外国株式が下がった局面で円安が進めば、ヘッジなしでは円安の効果が株価下落を和らげることがあります。ヘッジありでは、その為替効果を抑えるため、株式市場の下落が円換算の基準価額により直接表れます。
為替ヘッジありは「下落しにくい商品」という意味ではない。この比較がいちばんよく教えてくれる点です。
別シリーズでも、同じ傾向だった
一つのファンドだけの特殊事情でないかを確認するため、iFree外国株式インデックスでも同様に比較しました。
| 指標 | ヘッジなし | ヘッジあり |
|---|---|---|
| 比較期間 | 2020年6月〜2025年6月 | 同左 |
| 年率リターン | 22.18% | 11.26% |
| 年率ボラティリティ | 15.30% | 13.98% |
| 最大ドローダウン | -12.57% | -24.03% |
こちらも、ヘッジありはボラティリティがやや小さく、年率リターンは低く、最大ドローダウンは深いという結果でした。
もちろん、これも円安局面を含む特定の5年間です。二つの組み合わせで傾向が一致したからといって、今後も必ず同じになるわけではありません。
円高になれば、結果は逆転する?
円高局面では、ヘッジなしファンドの円換算リターンが押し下げられ、ヘッジありが相対的に有利になる可能性があります。
ただし、結果が単純に逆転するとは限りません。外国株式そのものの値動き、円高の幅、進む速さ、ヘッジコスト、ファンドの連動精度などが同時に影響するからです。
「これから円高になると思うからヘッジあり」という判断は、為替相場の方向を当てる投資判断を含みます。為替の予測は難しく、短期の見通しだけで長期保有するファンドを決めると、見通しが外れたときに保有理由まで失いやすくなります。
比べるときは、必ず「同じ中身」の2本を選ぶ
為替ヘッジの効果を見たいのに、片方が米国株、もう片方が全世界株では、差の原因が分からなくなります。
比較条件は次の順にそろえます。
- 投資対象地域
- 連動を目指す指数
- ファンドシリーズ
- 開始月と終了月
- 分配方針
そのうえで、為替ヘッジの有無を変えます。
今回たわらノーロードの2本を選んだのは、同じMSCIコクサイ・インデックスを土台にし、主な違いを為替ヘッジに絞りやすいからです。
FundLabで確かめる
FundLabのバックテストで、ファンド名に「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」と入れて検索してみてください。
確認したいのは、最終金額だけではありません。
- どの時期から差が広がったか
- 株式が下がったとき、どちらが深く下げたか
- ボラティリティはどの程度違ったか
- 比較期間を3年にすると、差はどう変わるか
線を重ねると、為替ヘッジは抽象的な用語ではなく、二つの違う値動きとして見えてきます。
まとめ
- 為替ヘッジは、外国株式の値下がりではなく、為替変動の影響を小さくする仕組み
- 同じたわらノーロード先進国株式の5年比較では、年率リターンはヘッジなし25.15%、ヘッジあり12.07%
- ヘッジありはボラティリティがやや小さかったが、最大ドローダウンは深かった
- 為替ヘッジにはコストがあり、その水準は固定ではない
- 将来の円高・円安を断定せず、同じ中身・同じ期間で比較することが大切
雨具は雨を弱めますが、地面の揺れは止めません。
為替ヘッジは、安心という名前の商品ではありません。
何の揺れを減らし、何の揺れは残るのか。そこを理解して初めて、「あり」と「なし」の文字が投資判断に使える情報になります。
「あり」と「なし」を同じ期間で重ねる
投資対象が近い2本を選び、為替の影響が値動きにどう表れたかをバックテストで確認できます。
為替ヘッジの違いを比べるデータと表示に関する注記
- 主比較:たわらノーロード 先進国株式/同<為替ヘッジあり>
- 主比較期間:2020年10月〜2025年10月
- 補足比較:iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし/あり)
- 補足比較期間:2020年6月〜2025年6月
- 年率リターン、ボラティリティ、最大ドローダウンは月次基準価額から算出
- 100万円の試算は税金等を考慮しない基準価額ベース
- 為替ヘッジの効果は完全ではなく、ヘッジコストは市場環境により変動します。
- 過去の実績は将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。本記事は情報提供を目的とし、特定商品の購入・売却を推奨するものではありません。