「年率リターン20%」を見ると、投資の未来は少し明るく見えます。
では、その20%にたどり着く途中で、資産が一時的に30%減っていたとしたらどうでしょう。100万円が70万円になっても、同じ気持ちで持ち続けられたでしょうか。
この“途中でどこまで沈んだか”を表す数字が、最大ドローダウンです。
先に結論を言うと、最大ドローダウンは「損をする確率」でも「将来の最悪値」でもありません。過去のある期間に、高値から安値まで何%下落したかを示す記録です。それでも、リターンだけでは見えない「持ち続ける難しさ」を知るうえで、非常に役立ちます。
FundLabが5年分のデータを集計できる投資信託819本を調べたところ、最大ドローダウンの中央値は-13.5%でした。直前の高値が100万円なら、そこから一時的に約86万5,000円まで沈んだ計算です。さらに、約4本に1本は20%以上の下落を経験していました。
数字の意味から、実際の使い方まで順番に見ていきましょう。
最大ドローダウンとは「いちばん高い地点から、いちばん深く沈んだ幅」
最大ドローダウンは、ある期間の中で、資産価値が直前の高値からその後の安値までどれだけ下がったかを表します。
たとえば、基準価額が次のように動いたとします。
10,000円 → 12,000円 → 9,000円 → 11,000円
最も高かった12,000円から、その後の9,000円まで25%下落しています。
計算式は次のとおりです。
(安値 ÷ それ以前の高値 − 1)× 100
この例では、
(9,000 ÷ 12,000 − 1)× 100 = -25%
したがって、この期間の最大ドローダウンは-25%です。
ここで大事なのは、最初の10,000円と最後の11,000円だけを比べると「10%上がった」ように見えることです。最終成績だけなら穏やかな成功談ですが、途中では25%の下落がありました。
最大ドローダウンは、成績表の裏側に隠れた“いちばん苦しかった場面”を見せてくれる数字なのです。
下落率と、元に戻るための上昇率は同じではない
もう一つ、最大ドローダウンを見るときに知っておきたいことがあります。
20%下がった資産は、20%上がれば元に戻るわけではありません。100万円が80万円になったあと、元の100万円へ戻るには、80万円から20万円増える必要があります。必要な上昇率は25%です。
| 下落率 | 100万円が | 元に戻るために必要な上昇率 |
|---|---|---|
| -10% | 90万円 | +11.1% |
| -20% | 80万円 | +25.0% |
| -30% | 70万円 | +42.9% |
| -50% | 50万円 | +100.0% |
下落が深くなるほど、帰り道は急になります。
だからこそ、リターンの高さだけではなく、「過去にどれほど深い谷を通ったか」を一緒に見る意味があります。
投資信託819本では、最大ドローダウンはどのくらいだった?
FundLabが収録する投資信託のうち、2020年11月から2025年11月までの5年データがそろう819本を集計しました。
| 最大ドローダウンの深さ | 本数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 10%未満 | 234本 | 28.6% |
| 10%以上20%未満 | 373本 | 45.5% |
| 20%以上30%未満 | 120本 | 14.7% |
| 30%以上 | 92本 | 11.2% |
※「10%未満」は下落が比較的浅い側、「30%以上」は下落が深い側です。
中央値は-13.5%でした。
また、20%以上下落したファンドは212本で、全体の25.9%です。言い換えると、この5年間では約4本に1本が、100万円なら一時的に80万円以下になる規模の下落を経験していました。
ここで「最大ドローダウンが小さいファンドほど優秀」と結論を急ぐのは禁物です。値動きの小さい債券ファンドと、値動きの大きい株式ファンドでは、狙っている役割が違います。最大ドローダウンは、同じような投資対象や運用目的のファンドを比べるときに、より意味を持ちます。
では、リターンが高いファンドを選べば、この谷は避けられるのでしょうか。
リターンが高くても、最大ドローダウンが大きいことはある
投資の成績には、少なくとも二つの物語があります。
一つは「最終的にどれだけ増えたか」。もう一つは「そこへ行く途中で、どれだけ揺れたか」です。
同じ年率リターンだったとしても、
- 比較的なだらかに増えたファンド
- 大きく下落したあとに急回復したファンド
では、保有中の体験がまったく違います。
人は、上昇しているときには自分のリスク許容度を高く見積もりがちです。しかし、本当に確かめたいのは、下落した日の自分です。
最大ドローダウンは、未来の暴落を予言する水晶玉ではありません。むしろ、過去の値動きを使って「この程度の下落でも保有を続けられそうか」と自分に質問するための鏡です。
最大ドローダウンを見るときの3つの注意点
1. 計測期間が変われば、数字も変わる
3年と5年では、含まれる相場局面が違います。大きな下落局面を含むかどうかで、同じファンドの最大ドローダウンは変わります。
異なるファンドを比較するときは、必ず同じ開始月と終了月にそろえてください。
2. 月次データでは、月の途中の急落を捉えないことがある
本記事の集計は月次データに基づきます。月の途中で大きく下がり、月末までに戻した場合、その谷は日次データほど深く表示されません。
したがって、本記事の数字は「その期間に起こり得る最大損失」ではなく、月次基準で観測した過去の下落幅です。
3. 将来の下落幅を保証する数字ではない
過去5年の最大ドローダウンが-10%だったからといって、将来も-10%以内に収まるとは限りません。市場環境、為替、金利、投資先の変化によって、値動きは変わります。
FundLabで最大ドローダウンを確認する方法
気になるファンドがあるなら、次の順番で見ると数字が立体的になります。
- 投資信託ランキングで、最大ドローダウンを確認する
- 同じ資産クラスのファンドを、同じ期間で比べる
- バックテストで、下落がいつ起き、その後どのように動いたかを見る
- 年率リターン、ボラティリティ、シャープレシオもあわせて確認する
最大ドローダウンだけで選ぶのではなく、リターンと下落の深さをセットで読むのがポイントです。
もし直前高値100万円から一時的に約86万5,000円になっても、そのファンドを持ち続けられそうでしょうか。
その問いに答えるために、まずは気になるファンドを一つ検索してみてください。数字が自分ごとになった瞬間、ランキングの見え方が変わります。
まとめ
- 最大ドローダウンは、過去の高値からその後の安値までの最大下落率
- 最終リターンだけでは見えない「途中の苦しさ」を表す
- FundLabの5年データ819本では、中央値は-13.5%
- 25.9%のファンドが20%以上の下落を経験
- 同じ期間・似た投資対象で比較し、他の指標と組み合わせて使う
最大ドローダウンは、怖がるための数字ではありません。自分が持ち続けられる投資かどうかを、上昇相場のうちに考えるための数字です。
気になるファンドの「いちばん深い下落」を見てみる
ランキングで最大ドローダウンを比べ、バックテストで下落が起きた時期とその後の動きを確かめられます。
最大ドローダウンを比較するデータと表示に関する注記
- 集計対象:FundLab収録ファンドのうち、2020年11月〜2025年11月の月次データがそろう819本
- データ生成日:2026年7月24日
- 最大ドローダウン:月次基準価額の直前高値から、その後の安値までの最大下落率
- 本記事は固定期間の過去データを集計したものです。将来の運用成果や下落幅を示唆・保証するものではありません。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。