「先進国は成熟している。新興国はこれから伸びる」
こう聞くと、新興国株式のほうが高いリターンを期待できそうに思えます。けれど、経済が成長することと、投資信託の基準価額が同じ速さで上がることは、同じ話ではありません。
株価には、すでに投資家の期待が織り込まれています。成長率が高くても、期待がもっと高ければ株価は伸び悩みます。反対に、成熟した国でも、巨大企業が世界中で利益を増やせば株価は上がることがあります。
では、実際の投資信託ではどのような違いが出たのでしょうか。
今回はブランドをeMAXIS Slimにそろえ、
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
の2本を、2020年11月から2025年11月までの同じ5年間で比較しました。
先に結果を言うと、この期間は先進国株式の年率リターンが22.87%、新興国株式が13.31%でした。一方、値動きの大きさはほぼ同じでした。
「新興国のほうが成長しそう」という物語だけでは見えない差を、順番にほどいていきます。
先進国株式と新興国株式は、何が違う?
先進国株式
今回の先進国株式ファンドは、MSCIコクサイ・インデックスへの連動を目指します。日本を除く先進国の株式が対象で、米国、欧州、カナダなどの企業を幅広く含みます。
成熟した市場が中心で、株式市場の制度や情報開示が比較的整っていることが特徴です。ただし「安定していて下がらない」という意味ではありません。株式である以上、大きく値下がりする可能性があります。
新興国株式
今回の新興国株式ファンドは、MSCIエマージング・マーケット・インデックスへの連動を目指します。中国、台湾、インドなど、新興国に分類される市場の企業を含みます。
経済成長への期待が注目されやすい一方、政治・規制・通貨・企業統治などの影響を受けることがあります。「新興国」という一つの国があるわけではなく、性格の異なる複数の国と企業をまとめた指数です。
5年間の実績を同じ条件で比較
| 指標 | 先進国株式 | 新興国株式 |
|---|---|---|
| 年率リターン(CAGR) | 22.87% | 13.31% |
| 5年間の累積リターン | 180.10% | 86.81% |
| 年率ボラティリティ | 14.26% | 14.01% |
| シャープレシオ | 1.60 | 0.94 |
| 最大ドローダウン | -12.54% | -14.99% |
| 信託報酬(年率・税込) | 0.09871% | 0.15180% |
期間は2020年11月〜2025年11月。数値は月次基準価額をもとにした過去の実績です。
もし開始時に100万円を一括投資し、そのまま保有したと仮定すると、基準価額ベースでは次の金額になりました。
- 先進国株式:約280.1万円
- 新興国株式:約186.8万円
差は約93.3万円です。
ただし、これはこの5年間の一括投資を単純化した比較です。税金、購入時の条件、個別の口座状況などは考慮していません。将来も同じ差になるという意味ではありません。
意外だったのは「新興国のほうが大きく揺れた」とは限らなかったこと
新興国株式には「値動きが非常に激しい」という印象があります。
しかし、この5年間の年率ボラティリティは、
- 先進国株式:14.26%
- 新興国株式:14.01%
と、ほぼ同じでした。
一方、最大ドローダウンは新興国株式のほうがやや深く、先進国株式-12.54%に対して、新興国株式は-14.99%でした。
ここから分かるのは、イメージだけでリスクを決めつけるのは危険だということです。どの期間を切り取るかによって、揺れ方も下落の深さも変わります。
「新興国だから必ず高リスク」「先進国だから必ず安定」という看板ではなく、実際の同一期間データを見る必要があります。
なぜ、この5年間は先進国株式が上回ったのか
この結果だけから、原因を一つに決めることはできません。
ただし、先進国株式指数には世界規模で事業を行う米国の大型企業が多く含まれます。一方、新興国株式は国ごとの政策、規制、通貨、産業構成などの影響を受けます。こうした違いが、この期間の基準価額に反映されました。
ここで注意したいのは、結果を見たあとなら、もっともらしい物語はいくらでも作れることです。
大切なのは、
この5年間は先進国株式が上回った。では、3年間ならどうか。開始月を変えたらどうか。下落した時期は同じか。
と、条件を変えて確かめることです。
実際、2022年11月〜2025年11月の3年間では、年率リターンは先進国株式25.00%、新興国株式20.04%でした。先進国株式が上回った点は同じでも、差の幅は5年比較より小さくなっています。
期間を変えると、同じ2本でも物語の表情が変わります。
「どちらか一方」だけが答えとは限らない
先進国株式と新興国株式の比較を検索する人は、最後に「結局どっち?」という一言を求めがちです。
しかし、その答えは、何をすでに持っているかでも変わります。
たとえば全世界株式ファンドには、一般に先進国株式と新興国株式の両方が含まれます。すでに全世界株式を保有している人が新興国株式を追加すると、新興国の比率を意図的に高めることになります。
それが自分の狙いと一致しているのか。それとも、知らないうちに同じ地域を重ねているだけなのか。単体の成績だけでなく、保有中のファンドとの重なりも確認したいところです。
FundLabで2本を比べるときの見方
FundLabのバックテストで次の2本を検索し、同じ期間にそろえてみてください。
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
見る順番は次のとおりです。
- 累積リターンの差を見る
- ボラティリティで値動きの大きさを見る
- 最大ドローダウンで最も深い下落を見る
- 3年と5年で期間を変える
- すでに持っているファンドも加えて、動きの重なりを見る
検索結果の数字を読むだけだった「先進国」と「新興国」が、線を重ねた瞬間に二つの違う値動きとして見えてきます。
まとめ
- 先進国株式と新興国株式では、組み入れる国・企業が異なる
- 2020年11月〜2025年11月は、先進国株式の年率リターンが22.87%、新興国株式が13.31%
- この期間のボラティリティは14%前後で、両者に大差はなかった
- 「経済成長率が高そう」という印象だけでは投資成果は決まらない
- 同じファンドでも、比較期間を変えると差の見え方は変わる
国の名前は、未来の成績表ではありません。
先進国か、新興国か。その看板から一歩進んで、同じ期間の実績を自分の目で重ねることから比較を始めてみてください。
先進国株式と新興国株式の線を重ねてみる
同じ期間にそろえて、累積リターンだけでなく下落の深さや値動きの違いまで確認できます。
バックテストで2本を比べるデータと表示に関する注記
- 比較期間:2020年11月〜2025年11月
- データ生成日:2026年7月24日
- 年率リターン、ボラティリティ、最大ドローダウンは月次基準価額から算出
- 累積リターンと100万円の試算は基準価額ベース。税金等は考慮していません。
- 信託報酬は記事作成時点で取得した公表情報に基づきます。最新の料率・商品性は各社の交付目論見書で確認してください。
- 過去の実績は将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。本記事は情報提供を目的とし、特定商品の購入・売却を推奨するものではありません。